白のシャツ

毎年毎年、分かってはいるのに夏の装いに期待を込めてしまう。
やれカンガルーレザースエードだのリネンシャツだの様々快適に過ごしやすいシャツを手にしながらも、結局のところ周りから見ればなんで長袖なんだろうみたいな見え方になる。

どうにかならないかと考えてみる。色か、素材か、はたまたムスッとした表情なのか、などとぐるぐるしていると、山内さんがウールで白のシャツをリリースされるというのを見かけた。
以前からそこのシャツには目をかけていて、何か来るかなと構えていたところだったのでお店に在庫を問い合わせた次の週には名古屋に居た。

最寄りは名古屋の地下鉄東山線の一社駅というあんまり馴染みのないところで。駅で降りた後ひたすら住宅街をぺたぺた登っていくと住宅の中に現れるようなお店。
お目当ての白のシャツをさっそく見つける。
素材はウールとシルクの混紡だそうで色は白と濃紺の2つ。
初めから白を目当てで見に行ったけれど、一応濃紺にも袖を通す。
うん、いい。どっちか選べと言われたら8割の人は濃紺を手にすると思う。
もちろん白も着てみる。透ける。なんかシルエットがでかい。
ウールとシルクによる、サッと舞うような軽さはやはり色味も相まって白のほうが圧倒的な強度がある。
ここでいう強度というのは、存在感だとか季節感とかその辺を包括的にした感じの使い方です。

また、その時着用していたジーンズがちょっと色落ちした紺色で、これまた色味の合わさり方が最悪だった。
あまり納得がいったという感じでもなかったけれど、この軽さは気になるというのとウールの白のシャツというのはまず作られないということを秤にかけて購入することにした。

お店の方と白シャツほとんど持っていないんですよねみたいな会話をし、後日クローゼットを覗くと3着あったというよくわからないやらかしもしていた。

1ヶ月ぐらい後に注文した白のシャツが届く。
まずはシャワー浴びるついでに洗ってみる。ウールが濡れた時の独特のにおいがする。
着てみる。軽い。透ける。

本当に夏が来たら、外に出ることもなくエアコンの下に居ることは想像に難くないけれど、
それでも、これでどこかへ人知れず旅をしたい。